次元を裂く曲線  〜フランク・ゲーリー展〜

 

総合政策学部3年

小山峻

 

美と合理の融合。フランク・ゲーリーの建築は、この印象が非常に濃く表れている。

「ウォルト・ディズニー・コンサートホール」の外観や「Facebook本社 西キャンパス」の施設の配置図など、フランクの建築には大胆で自由な曲線が用いられることが多い。見る角度によってガラスの輝きや影の濃淡が変化する美しさは、いくら眺めても飽きがこない。「建築物」という存在が、既に稀有な価値を確立させているのだ。その所以は、設計の段階からうかがい知ることができる。彼は設計を練り始める時、木製ブロックやボール紙、ガラスや3Dプリンター等のオブジェクトを使用して実際に模型をつくるのだ。図面に留まらず常に3次元の視点を踏まえて考えを進めているが故に、従来の「建築」を超えた美が生まれるのである。

またフランクは建築の常識に捕らわれない一方で、非常に合理的な側面も持ち合わせている。資材のID化や、建物の内部で起こる全プログラムの検討、ボルト1本1本の位置すら綿密に設定された建築物の3Dデータを彼は「ゲーリー・テクノロジーズ」という事務所で余さず管理している。それは結果として、建設の時間短縮、資材の生産や現場指揮の効率化を可能とするのだ。先述した「Facebook本社 西キャンパス」は、設計依頼からたった3年での竣工を予算内で実現させている。フランクは、いわば4次元のデザインも担っているのである。

子供のような奔放な発想、そして惜しみなく活用される最先端の技術を掛け合わせることにより、フランクは本来異なる次元にある「美」と「合理」の壁を軽やかに取り払う。そして「建築」の可能性に更なる次元の領域があることを、我々にまざまざと見せつけるのだ。フランク・ゲーリー展を訪れた後に、身の回りにある典型的なビル群を見つめてみるといい。「今の建築の98%はクソだ」と断言した彼の心境を、多少なりとも理解できるだろう。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です