『エール!』

『エール!』

 

世界でも五本の指に入るくらいの有名マジシャン。プリンセス天功のイリュージョンなど、私の前では幼稚園児のおままごと。見る人全てが私のマジックの虜になる。「どうだ!凄いだろ!!」・・・だけど、そんなマジシャンの手品に唯一ひっかからない人たちがいた。それは、盲目である自分の家族。どんなに自分が凄いのか、家族には全く伝わらない。一番大切な人に自分の才能が伝わらない。映画「エール!」の主人公、ポーラ・ベリエの境遇は、そんなマジシャンと同じ。

ポーラ・ベリエ以外の家族は全員、耳が聞こえない。朝は家族の手伝いで農業。手伝いが終わった後、学校に行く毎日。ある日ベリエは、学校で気になる男の子がコーラスの授業を専攻することを知り、自分もコーラスの授業を専攻する。コーラスに対して全く興味のなかったベリエだが、先生にその才能を見出され、次第に音楽にのめり込んで行く。「パリの音楽学校の試験を受けたい。」そう家族に告げたベリエだが、耳の聞こえない家族にとって「歌」なんて存在しないも同然。ベリエの歌は、家族に届くのか。

家族が聾唖、一人だけ耳が聞こえて歌の才能がある。今までに考えたこともない境遇だった。何とも酷。だってそうでしょう、自分に歌の才能があるのにその歌声が家族に届かないなんて。だけど映画全体を通して、観ているこっち側の心が沈み込むことはなかった。それが不思議。衣装がオシャレだったり、セットや風景が綺麗だったりすることが原因の一つなのかもしれない。ただ終始釘付けになったのが、家族に対するベリエの想い。伝えようとする気持ち。真っ直ぐな心に、観ているこっちも安心して身を委ねられた。人の心に届く何かを表現したいとき、真面目で真っ直ぐな気持ちが大切なのか。騙すことが生業のマジシャン、君のあ想いが家族に伝わる日は来るのだろうか。

 

福田周平

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です