エール!

歌の才能を認められパリの音楽学校のオーディションを勧められた少女と、聴覚障害のある家族との絆を描いた感動作。最愛の家族を支える役目と自らの夢の間で揺れ動くヒロインを、新人ルアンヌ・エメラが好演し、セザール賞最優秀新人女優賞に輝いた。『プレイヤー』などのエリック・ラルティゴ監督がメガホンを取り、『しあわせの雨傘』などのカリン・ヴィアール、『タンゴ・リブレ 君を想う』などのフランソワ・ダミアンらが共演した作品として注目を集めた。

まず感じたのは、ドイツ映画の『ビヨンド・サイレンス』と設定が似ている。最初リメイクかと思ったほどである。どちらも、聴力障害の両親を持つ田舎の女の子が音楽を志す中、親子間の葛藤を経て都会の音楽学校を受験するまでの話。最後、試験に親が立ち合い、そこで思いが通じるというのも同じ。こちらは歌で、あちらはクラリネットという違いはあるのだが。

「毒親」なんていう言葉が少し前に流行りだして、あまり好きじゃないのだが、この場合もそうなのだろう。実際、ママはポーラが出て行くという事実を受け入れられない。受け入れられなくてついつい「育ててやったこと」を口にしてしまう。「ママが嫌いなのね」と言ってしまう。障害がなくたってこんな親どこにでもいる。子どもの声が聞こえない親。人間は我がままなものである。でも、それだけ愛してるということなんだ。そういう親を「毒親」で片づけるのは寂しいものである。

ポーラにとっては別に家族から離れたいわけじゃない。ただ行きたい場所がパリにあるだけ。手話の通訳がイヤなわけじゃない。ただ自分の道を歩きたいだけ。その思いで選んだ歌「Je vole」でのオーディション。手話を使って両親に向かう。家族はポーラの歌をあの時「聴いた」のだ。問題を投げ出さず、あきらめず、ぶつかったから叶った夢。才能だけじゃなくて、人生には立ち向かうコミュニケーションが必要で、そして愛も必要なのだと。自然にそう思わせてくれた。 ポーラをこう育てたのは間違いなくこの両親で、だからやはり最高の親子で最高の家族。大丈夫。子どもを愛しすぎることも縛る事も決して毒ではなく、歌声を聞く事が出来た時に解放は成される。温かくそう教えてくれる作品だった。

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