ニキ・ド・サンファル展
福田和也研究会
学籍番号:71447032 環境情報学部 2年 原 理奈
〜ニキの世界〜
現在国立新美術館ではニキ・ド・サンファル展が開催されている。ポスターのビビッドピンクがとても印象的だ。私は絵画などの美術作品にあまり詳しくはないし、ニキのことも知らなかった。しかし、ポスターのピンクでポップなデザインが気に入り、私の好みの作品が見られることを楽しみにしていた。
ポスターの右側にはニキらしき女性が銃をこちらに向けている。なぜ銃を持っているのだろう?そんな疑問を抱きつつ、私は美術館の入り口に一歩踏み入れた。
そして、入ってすぐに私の疑問は解消された。ニキ・ド・サンファルはパリに生まれ「射撃絵画」の発表後、ヌーヴォ・レアリスムの一員として一躍有名となった芸術家である。最初に展示されているのは、その「射撃絵画」であった。それらやおもちゃのピストルを石膏にくっつけた作品は私のポップなイメージとはかけ離れていた。さらに、ニキが絵の具の入った缶や袋に向かって銃を撃っている映像が流れていて、その銃声も加わり、怖さを感じた。銃を撃たれることで流れ落ちる絵の具が血のたれる様子にそっくりだった。
冒頭からニキの表現力には衝撃を受けたが、そのまま順路に沿って足をすすめていくと、いきなりポップな作品が現れた。私が求めていたものとはいえ、あまりの作風の変わりように驚いた。そこからは「ナナ」シリーズが多く展示されていた。ナナは女性をテーマにした作品群で、自由と喜びと力に満ちた女神である。私はナナシリーズの色使いが好きだ。ビビッドカラーや模様は女性が好きそうなデザインだった。ナナのフォルムはとてもぼてっとしていているが、ポーズはとても軽やかな動きがついてあり、眺めていると私の心までふわっとなった。最初は気づかなかったが、ナナはポスターのロゴの中にも控えめに、しかし確かに存在していた。そして、最終的には、ポスターの中の女性も銃のこともビビッドカラーが用いられている理由もナナの存在も、すべてを理解してニキ・ワールドの出口へと向かっていったのだった。
コメント
福田研究会 コラム課題
環境情報学部 学籍番号71247594 氏名 平野 貴裕
ニキ・ド・サンファル展で私が見たものは女性の強さであった。現代の価値観からする女性の「美しいスタイル」とは掛け離れたものである。どう見られたいのか、どうありたいのか、という疑問について全体を通し考える時間になった。彫刻のモデルとなっているのは女性だが、いわゆる美しいポーズやスタイルはしていない。率直に太っている女性が思い思いのポージングを取っている。無機物であるはずのその彫刻からは自信が溢れ出していた。本当に醜いのは周りの評価に一心に囚われ、自分への自信を喪失している者なのではないのかと感じた。
そしてその彫刻が身にまとっているものは、どれも原色に近い色を組み合わせたものである。まず、同じような色の服を着て街中を歩くのは気がひけるのではないだろうか。それを、これまで感じたことのないような自尊心でどの彫刻も着こなしている。
この異様な世界観を受け入れるのに長い時間はかからなかった。現代の、特に日本に明らかに欠如しているものだからだ。人は、他人の価値観を気にしなくなった時に、立ち所に自信に満ち溢れる。逆説的に他人の価値観を受け入れた時に自信が生まれる。同じ空間に何体もの女性の像が建ち並び、その空間はありとあらゆる色に支配され、それぞれが周りの像を気にせずポーズを取っている。しかし、そこに無駄なノイズはない。それは、周りの価値観を無視しながらも受け入れているからである。
この空間に忌々しい承認への欲求はなかった。自信はあったが謙虚であった。そして何よりも明るかった。一体一体が人のあるべき姿を主張していた。人は他者の目を意識し、まとまろうとする。しかし、他人からの承認を求めている限り、そこに幸せは生まれない。他人の価値観を無視し尊重した時に本当の美しさが生まれるのではないだろうか